2011年12月26日月曜日

AKB48のマーケティング戦略


AKB48(Media選抜)

 AKB48の商品設計は、メンバー、楽曲、ライブ、ファンをへの施策という視点から、ソリューションとして設計されている。故に、メンバーがいかなるものであっても成立するようになっている。
 そのソリューションには、アウターコンセプトである「会いにいけるアイドル」に対して、「何も加工されていない生の人間の、並外れた成長を見せる」インナーコンセプトが設計されている。それが、前田敦子というフラッグシップで「見える化」したことで、顧客はインナーコンセプトを明確にイメージすることができた。
 さらに、その内容を作詞家やアーティストの思想や感情という「STORY」ではなく、ファンやメンバーの想いや経験を代弁する「ナラティブ」で語った。故に、「次々」に起こる、「様々」な、「現在進行形」の無数な物語を生み出し、これがいつもAKBの鮮度を保つことなっている。
 
 AKB48の普及戦略では、AKB48の展開がロジャーズの普及モデルと一致していた。これは普及戦略がしっかりと考えられ、実行されていることを示している。第一期は、イノベーターである、秋葉系のアイドルオタクを獲得した。第二期は、アーリーアダプターを獲得した。アーリーアダプターは、たくさんのメンバーじゃら自分の意中の人を捜す楽しみや、メンバーとチームの成長を見守れる楽しみ、ファン同士が交流できる楽しみなどを感じた。
 
 着目すべきはここからである。
 
 第三期、第四期はクリティカルマスを超える戦略に出た。これを可能にしたのが、「大声ダイヤモンド」である。この結果アーリーマジョリティーである34%をしめる大衆を獲得している。そして今、第五期はレイト・マジョリティーに達している。

 AKB48の市場戦略は、最初はセオリー(STPと新世代マーケティングの融合で、濃い顧客を作るというものだった「30代、40代ぐらいの男性アキバ系アイドルマニア」というターゲットに「メジャーアイドル並のクオリティと地下アイドル並みの近さ」という価値を実現し、熱狂的なファンを作ることに成功した。

 更に、ブレイクの手前で、ニッチ戦略から、リーダー戦略へと変更する。(大声ダイヤモンドだ。ここを境に、明らかに振り付け、歌詞が変わっている)。これによって一気に顧客を拡大している。作詞・作曲・振り付け・メディア展開、イベントといったすべてを全国展開に切り替えて、全方位戦略を取っている。

 次にAKB48のプロモーション戦略は、マーケティングシステムといえるほどよくできたものである。それは、トライアルユーザーを獲得し、ユーザーを感動させ、リピーターを促進する関係性マーケティング(和田充夫:関係性マーケティングの構図)と言える。これは特に、AKB48の選抜総選挙が顕著であり、No.1を目指すメンバーを、いろいろな投票方法でファンが応援し、感動を共有することで、両者の関係を深めるということである。

 また、AKB48オープンソース的な考え方で作られていた。これによって、たとえメンバーが抜けて、ファンが入れ替わっても、進化し続けることができ、常にファンのニーズを反映させることができた。

 AKB48が素人を採用する(AKBのオーディションは当初、事務所に所属したことがあればアウトだった)理由は、素人は未完成であるが故に、ファンは応援する楽しみと、成長と見守る楽しみの両方を味わうことができることである。また、その基本戦略は差別化にある。これは、秋元康の“世の中には必ず反動があると考え、人が手を出さないことをやることが、成功のための最良の方法である”という考え方に基づく。そして、商品設計はアイドルの4大要素である「処女的アイドル性」「パフォーマンス性」「庶民性」「地下アイドル性」を掛け合わせて作られていることがわかる。

 AKB48のビジネスモデルは、「イベント事業」「物販事業」「会員事業」の3つであり、それらが相互連携していることが特徴である。更にこのメインシステムを補完するのが「制作事業」と「プロダクション事業」という2つのサブシステムである。このような、メインシステムとサブシステムからなるAKB48のビジネスモデルは、大きく二つの利益モデルを使っている。一つはインストール・ベース利益モデルであり、もう一つは顧客ソリューション利益モデル。この二つの併用で、利益を大きくしている。



(参考:AKB48がヒットした5つの秘密


コメント:すごく面白い本です。おすすめです。上のようなことがすごく細かく説明されていて新しい視点をたくさんもらえますよ!

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