高校数学の問題 |
じゃあ、何してるんだ言うと”証明”と”存在”というものを行っています。問題には大きく分けて、高校の頃からでも3種類あると思います。
(1)計算問題
(2)証明問題
(3)存在問題
正直な話をすれば、理工学を学ぶ人でも数学科にいかない限りは、意味不明な(2)と(3)を扱うことなんてありません。物理、化学、生物のどれをとっても、”計算”は少なからずありますが、証明や存在についての議論はほとんどないのです。しかも”計算”はコンピューターが複雑なものは処理してくれますので、対してそう言う部分での苦はない。なので逆に言えば、高校生の皆さんは数学科に行かない限り”好奇心”を大事にして理工学部を志してくれればOKです!(実験したいぜ!って言って入れば1年生/2年生の基礎教養でちょろっと証明が出るぐらいで、計算問題がほとんどなので3年生からは楽勝です。実験は大変ですが。)
ただ、数学科はそんなわけにもいきません。高校レベルの数学が大好きで”数学科”に進む人は多くの場合”後悔”をします。大学の数学に”〇〇の体積を求めよ”や”ここの角度は?”などの問題はないです。皆無です!こういうある程度”センス”や機転を利かせれば解けるような問題はあんまりないですし、解いて計算値が合っているから”やったー”なんて言う喜びも期待しないでください。”これは完璧な証明だ”ということに快感を覚えられないと正直やっていけません。ちょっと具体的に問題を出してみましょう。簡単な問題です。
問題1:lim(1/n) (n→∞)を計算せよ
問題2:lim(sin(x)/x) (n→0)を計算せよ
lim(1/n)=0 (n→∞)
lim(sin(x)/x)=1 (n→0)
となります。これらは、高校で十分に演習しているはずで今更とやかく言うような問題ではありません。(覚えとけ!っていうレベルです)。ただ、アルキメデスや、ニュートン、ガウスの時代はこの問題意識だったんです。これで、「ニュートン力学」が成立しているのでかなり強力な武器です。アインシュタインももしかしたらここからの話は気にしてなかったかもしれません。理工学部でも数学科・数理学科以外はここまでで十分です。ですが、ここからが数学科のやることです。
問題1:lim(1/n) (n→∞)を証明せよ
問題2:lim(sin(x)/x) (n→0)を証明せよ
この問題になると、「lim」のコーシーの定義が基本で、これを覚えておかなければ手も足も出ないということが起こります。え、なにそれ・・・おいしいのって感じですね。
さらにこんな問題が
問題3:lim(1-1/2+1/3-1/4+・・・・・+((-1)^n+1)/n)(n→∞)の存在を示せ
こうなってくると、実数論の公理(デデキント)を覚えておかないといけません。以下の(a)〜(c)は証明は省きますが、どれも同値な主張であり、「実数論の公理」と言えます。
(a):上に有界な集合A(in R(実数全体集合)はsupAを持つ
(b):R(実数全体集合)内のコーシー列は収束する
(c):R(実数全体集合)内の上に有界な単調増加列{Xn}(n=1 to ∞)は収束する
コーシー・リーマンの定理 |
空を飛んで、社会を俯瞰するのと同様に、原理・原則という深く潜ることから見える、大きなテクノロジーの動きもまたおもしろいと感じています。